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アルベニスの「セビーリャの聖体祭」の第255~274小節の運指について

アルベニスの「イベリア」は、全4巻、各巻3曲の全12曲からなる、スペイン音楽における金字塔的な存在にして、演奏者には大変な技巧を要求する難曲でもあります。

この記事はそのうちの1曲である第1巻の第3曲「セビーリャの聖体祭」について、特に、難所と言われる255~274小節の運指についての記事です。

目次

「セビーリャの聖体祭」について

「セビーリャ」は地名であり、セビージャやセビリアと呼ばれることもあります。

さて、「セビーリャの聖体祭」は「イベリア」の中でも、技巧的な観点から見ると、かなり異質な作品と言えます。

これは楽譜を見ると明らかで、オクターブや左右交互連打の音形の多用が目立ちます。「イベリア」でこのような作品は他にはありません。

また強弱の指示もppppp~fffffと幅広いのは特徴的です。ほんの一例ですが、以下の楽譜を見ていただければお分かりになるかと思います。

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最大の難所 第255~274小節

全体として急-緩-急-緩の構造をとるこの曲ですが、やはり急の部分の、特に上記の譜例のような音形のところが最も目立つところであります。ですが、本当の難所はここではなく、第255~274小節でしょう。

小節番号で言われても、という方が大半だと思いますが、以下の動画ですと、5:25~のところになります。演奏はAlicia de Larrocha。素晴らしい演奏です。

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この箇所が難所である理由は、片手だけでも弾きにくいというのはありますが、両手が激しく交差するためです。

楽譜通り演奏するのは非常に困難で、極端に速度を落とすピアニストや、また全く交差がないように左右を取り替えてしまうピアニストも少なくありません。

運指を考えました

そこで、私が考えた運指を公開しよう、というのが本記事の目的です。以下がその運指です。画像の中でLやRと出てくるのはそれぞれ左手、右手を指します。たとえば、上段に書かれていてもL3と書かれていれば、左手の3番(中指)でとる、というような見方です。

「イベリア」の特徴である手の交差を排除してしまっては、この曲の魅力を損なうと考え、左右の位置関係は基本的に保ったまま、どうしても難しい箇所だけ左右を取り替える、というような運指になっています。

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演奏してみました

実際に私が演奏してみたのが以下の動画です。

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ちなみに、東京大学教養学部選抜学生コンサートという演奏会でも、第1曲「エボカシオン」と第3曲「セビーリャの聖体祭」を演奏しました。よろしければお聴きください。(該当箇所は11:28~です。)

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この曲を演奏される方がどの程度いらっしゃるのかは分かりませんが、参考になれば幸いです。