【知られざる名曲】バグダサリアン 24の前奏曲
このブログでは、知られざるピアノの名曲を紹介しています。
今回はアルメニアの作曲家、エドゥアルド・バクダサリアンの「24の前奏曲」をご紹介します。
目次
バグダサリアンについて
エドゥアルド・バグダサリアン (1922 ~ 1987) はアルメニアを代表する作曲家の一人です。
クラシックからポップスに至るまで、さまざまなジャンルの作品を残しましたが、日本での知名度はあまり高くありません。
なお、アルメニアの作曲家のピアノ曲については、当ブログの↓の記事でも紹介しています。
なかなかに名曲の宝庫なので、ぜひ聴いてみてください。
24の前奏曲について
バグダサリアンが残した数少ないピアノ曲のうち、最も有名なものが「24の前奏曲」です。
ショパンなどの「24の前奏曲」と同じく、ハ長調 → イ短調 → ト長調 → ホ短調という順で曲が配置されており、最後はニ短調で終わります。
全曲通しでの音源はこちら↓
時間は40分ほどと中々の大作となっており、全て聴くのは大変だと思います。
ということで、この記事では中でもオススメの曲をいくつか紹介します。
なお、一番人気があるのは6番です。とりあえず一曲だけ聴いてみようかな...という方は、6番だけでもぜひ聴いてみてください。
第4曲 ホ短調
6/8拍子で書かれたトッカータ的な曲。少なくとも前奏は明確にホ短調ですが、独特の旋法に基づくメロディーが出てきたり、中間部では雰囲気がガラっと変わって無調的になったりと、1分強の間に非常に豊かな表情を見せます。
第6曲 ロ短調
全24曲中、屈指の人気曲。
三部形式で書かれており、流麗なメロディーが美しい主部と、舞曲調の主題が劇的に展開される中間部からなります。
全体を通してアルペジオを駆使しており、演奏効果も抜群です。
第9曲 ホ長調
4声で書かれた、バロック音楽の影響を色濃く感じさせる作品。
主旋律の美しさが際立つ、穏やかでありながら、少しの躍動感も感じられる作品です。
第14曲 変ホ短調
この曲も三部形式で書かれていますが、主部はかなり掴みどころがなく、無調的な性質も強い作品です。
しかし、変イ長調に転じて明確にメロディーが出現する中間部は非常に美しく、その対比が見事です。
第23曲 へ長調
聴いただけだと分からないかもしれませんが、和音の左右交互連打だけで書かれている曲です。楽譜はこんな感じになっています↓
音域が近い和音を弾くため、必然的に音響的にも面白くなる作品。弾いていて楽しいという意味でも、個人的にはポイントの高い一曲です。
第24曲 ニ短調
24曲の掉尾を飾る終曲です。おそらくは第6曲に次ぐ二番人気の曲です。
ショパンやスクリャービンは終曲を激情的な曲で締めましたが、バグダサリアンはそうはしませんでした。
感傷的なメロディーが美しい、透明感のある和声と対位法的な性格も際立つ名曲です。
楽譜について
無料楽譜
楽譜はネットで入手することもでき、Scorserなどのサイトで「Bagdasarrian」で調べればすぐに出てくると思います。
ただしバグダサリアンは著作権が切れていない作曲家なので、自己責任でお願いします。
また、誤植が多く楽譜が読みにくいのも欠点です。
有料楽譜
長年の間、合法的には楽譜の入手が難しかったこちらの作品ですが、なんと2022年になって、日本のMuse Pressという出版社から楽譜が出版されました。
この曲を実際に演奏しているラフィ・ベサリアンというピアニストが校正しており、無料の楽譜と比べると、楽譜自体もかなり読みやすいです。
需要が少ないということもあって値段は高いですが、この作品を演奏されるのであれば、個人的には非常にオススメです。